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陸はおまけにもう一回踏ん付けて、出会いの木、さくらの木の下に腰を下ろした。
初めて会った日のように、桜は桃色の花をその両手いっぱいに咲かせている。
「りーくーぅ…」
二人は砂を若干つけて、恨めしそうに睨み付ける。
「先に喧嘩売ってきたのはてめぇらだ。それとも、まだやられ足りねぇか?」
陸は拳をつくり、あぁと睨み上げた。
悲しいかな、一度身についた上下関係?に二人はうっと呻いて下がるだけだった。
「わかりゃあいい。…おぉ♪」
不意に陸は首をのばし、顔をキラキラと輝かせた。
陸がこういう表情をするときは主に二つ。
・大好物を見つけた
・危険に直面したとき
さて、今回は…
四人は後ろを振り返る。
少し離れたところに、一匹の日本犬がいた。
「ハンサムやぁ~♪」
陸はてってけと犬に近寄る。
大抵は逃げるが、なんと犬の方から近づいてきた。
「おぉ」
陸はますます上機嫌である。これがさっき男二人を倒した女と同一人物だろうかと疑いたくなる。
「へー、可愛いね。野良かな?首輪ないし」
犬を撫で回す陸の後ろから綾が覗き込んできた。
「んー、野良じゃあないな。チップが首んところに入ってる。そこそこいい所に飼われてたお坊っちゃんだな」
「チップって?」
「ドイツとかアメリカには大分普及っーか一般的になってて、迷子防止にもなるし、野良か飼い犬か区別するために使われるチップさ。犬の首の所に埋めとくんだ」
指先に感じる堅いしこり。
「獣医ってこの辺いないの?チップに入れられた情報をみる機械は大抵獣医の所にあると思う」
「知ってるぜ。めっさんがいる」
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