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それから、オレと男が会ったのは、あの会話から随分たった後で、しかし年内であった。
「や~…言ってた通りになったさ…」
「は、あの時、知ってたような口ぶりだったぜ」
「オレは一応、嫌って言ったさ」
「ほざけ。――構えな、次期ブックマン」
「うわぁ、痛い皮肉さ」
そう言いつつも、男は得物を構えた。
あぁ、こういう男だ。
手を離す。六幻が、地面に転がる。
似たように、男が地面に転がっていた。
「っ…あ~…、やっぱ、ユウにはかなわねぇさ…」
「……修業不足だ、」
オレは痛む体を引きずって、動けないらしい男に近寄る。
後ろでノアに勝ったらしいモヤシが何か言っていた。分からない。
「――…ユウ」
一つだけの緑は、何も変わらず、オレを見上げた。
オレは、晒された男の首に、両手を置いた。
「……そうさ、ユウ。おもいっきり、力込めて…」
男は緩やかにオレの手を撫でた。その瞬間、オレは力を込めた。
がっ、と男が唸る。
ボタリ、男の頬に何か落ちる。
男は、笑った。ありがとうと、言った。
―――オレは、愛しい人を、殺しました。
END
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