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「……風よ」
アリスの口から漏れた小さな呟き。
まるで、それに自然が応えたかのように、野原を風が吹き荒れる。
野原の草が左右に揺れ、カイの髪も乱れてしまう。
しかし、風はアリスだけを避け、アリスは衣服も髪型も一切乱れていない。
「……一体、何を?」
『我の出番か……主人よ?』
低い男性の声が野原に響き渡る。
正確には短剣から発せられていた。
「少しだけ力を借りるよ」
『了解した……風よ』
さらに大量の風が吹き荒れる。
その強さにカイは目を開けていられない。
2人の周囲を徐々に風が囲っていく。
風が集まり、巨大な竜巻が出現した。
丁度買い物を終えたシンは、突然出現した竜巻に仰天する。
「た、竜巻……?」
「始めよう……」
アリスはまず、一歩踏み出し、
気付いた時にはアリスの姿はカイの視界から消えていた。
「……!?」
首筋に突きつけられた短剣。
触れてはいないが、短剣が纏う風が、カイの首筋に小さな傷をつけていた。
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