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夜風が吹く静かなバルコニーに着くと、ゼノは話し始めた。
「時間が無いから率直に言わせてもらう。カイ、お前は魔術師になりたいか?」
「えっ!?」
全く予想していなかった質問。
てっきり、先日、ゼノの愛用している“赤炎槍”を振り回していた事を責められるのではと、恐々としていたのだ。
「そりゃ、なりたくないって言ったら嘘になるけど……。
でも、俺は隣街の戦士学校に――」
ゼノは手でカイを制し、淡々と言った。
「実はリナちゃんの行くアルバート魔術学校からお前に誘いがきてる」
「……本当ですか!?」
「ああ、“学校側”から直々の推薦だ。学費などはすべて学校側が負担。入学試験もすべて無条件パスだ」
「けど、なんで俺が?」
「それはお前の両親も関わってくる話だ。だが、俺が聞きたいのはお前の意思。どうなんだ?」
「俺は……」
答えは決まっていた。憧れた道を掴む機会をさらさら逃す気はない。それに魔術という未知の領域には高揚を覚えずにはいられない。
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