16人が本棚に入れています
本棚に追加
少年少女の願い編:いつかは朽ち果てる
むかーし、むかし、まだ不可思議なことが現実として行われていた時の話。
ある所に、一人の錬金術師がいた。
彼は天才とも崇められたし、落ちこぼれとも囁かれた。
誰もが不可能だと謳われていた『魂の錬成』をいともたやすくやってのけた代わりに、
その他の錬成が全くできなかったのだ。
現世で動く身体がなければ
どんなに才能のある魂でも使い物にはならない。
彼は様々な錬金術師を集め、
完全な魂にふさわしい体を造るべく研究を進めさせた。
だがしかし、できるのは体とはとても呼べない代物ばかり。
魂を保存でき、何万年も封じ込める箱や、魂に触れる事のできる指輪や……
こんな物は私の作りたい物ではない!
彼はあせり始めた。
というのも、彼が完璧な人間を創ろうとしていたのには訳があったのだ。
彼には娘がいた。
生まれた時代が厳しすぎて、戦争で幼くして死んだ娘が。
戦争で親に、兄弟に、妻に先立たれ、たった一人の家族まで失った時、彼の中で何かが変わってしまった。
『もう放さない、離さない。
逃がしなどしない』
完全な魂など貴族から研究費を得るためのただの足がかり。
彼は狂った考えをどんどん迷走させていった。
最初のコメントを投稿しよう!