少年少女の願い編:いつかは朽ち果てる

1/7
前へ
/68ページ
次へ

少年少女の願い編:いつかは朽ち果てる

むかーし、むかし、まだ不可思議なことが現実として行われていた時の話。 ある所に、一人の錬金術師がいた。 彼は天才とも崇められたし、落ちこぼれとも囁かれた。 誰もが不可能だと謳われていた『魂の錬成』をいともたやすくやってのけた代わりに、 その他の錬成が全くできなかったのだ。 現世で動く身体がなければ どんなに才能のある魂でも使い物にはならない。 彼は様々な錬金術師を集め、 完全な魂にふさわしい体を造るべく研究を進めさせた。 だがしかし、できるのは体とはとても呼べない代物ばかり。 魂を保存でき、何万年も封じ込める箱や、魂に触れる事のできる指輪や…… こんな物は私の作りたい物ではない! 彼はあせり始めた。 というのも、彼が完璧な人間を創ろうとしていたのには訳があったのだ。 彼には娘がいた。 生まれた時代が厳しすぎて、戦争で幼くして死んだ娘が。 戦争で親に、兄弟に、妻に先立たれ、たった一人の家族まで失った時、彼の中で何かが変わってしまった。 『もう放さない、離さない。 逃がしなどしない』 完全な魂など貴族から研究費を得るためのただの足がかり。 彼は狂った考えをどんどん迷走させていった。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加