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だがしかし、彼の望みは叶わなかった。
国同士の戦争……彼の家族を奪った原因は、
ついに研究費を出していた貴族さえも殺した。
これまで大して成果をあげていなかった研究は、打ち切られる事になった。
爆撃でここもそう長くはもたない。
一人、また一人と去っていく研究室の中、彼は首に吊した箱を握りしめた。
娘の魂を封じ込めた箱を。
そして見たのは研究室の保管庫。
彼がありったけ集め、天才的に発達した才能をかき集めた魂の数々、
それらを保存してある箱……
これまでの研究の成果が、全てそこに納められていた。
『……何故だ』
彼はかんしゃくを起こしたように叫んだ。
『何故お前たちは私の役にたたない!
完璧に創ってやったろう、魔力を与えて魔法も使えるようにしてやったろう!
今お前たちは現存する全ての人間を超えたはずだ!
なのになぜ……』
欠けているのは、体だけなんだ……
爆撃音が響いた。
いつ爆撃されるか分からないとは聞いている、別段驚く事もなかった。
窓をのぞき込んだ時、そこは地獄絵図だった。
民衆は倒れ、累々と積み重なるのは死体ばかり。
いっそ、あの死体が欲しい……
彼はすがるように手を伸ばした。
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