太陽は薄く微笑む

2/2
前へ
/68ページ
次へ
「誠司くん、蓮華を知らない?」 「え? そういや『生地が焼き終わるまで暇つぶし』 って出かけた後、見てないッスね」 厨房に顔を出した凪さんは、どうしたのかしら と形の整った眉を寄せて頬に手を当てた。 その憂い気な動作にも美麗な物があり、俺は胸が高鳴るのを感じた。 「これ以上帰ってこないなら、少し様子を見に…… どうしたの?」 じっと見ていたら気づかれたらしく、首を傾げられた。 見つめられている事に慌ててしまい、 飾り付けをしていた手を取り繕うように動かす。 「いえ、その…… 困ってても、凪さん綺麗だなあと」 「はあ?」 言ってから後悔した。 すぐに口に出してしまうのは俺の悪い癖だ。 「誠司くん、今は私よりも蓮華の心配をしてちょうだい」 案の定、今度はムッとした顔で怒られた。 そんなんだから刑事も辞めるはめになったのよ、と 全然関係ない所で文句を言われる。 だけど、やっぱりそんなあなたも俺は好いていて。 もちろん蓮華も大切だけど、 蓮華の心配よりも怒ったあなたの顔に気を取られることを、 どうか許して欲しい。 「誠司くん、聞いてるの?!」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加