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「誠司くん、蓮華を知らない?」
「え? そういや『生地が焼き終わるまで暇つぶし』
って出かけた後、見てないッスね」
厨房に顔を出した凪さんは、どうしたのかしら
と形の整った眉を寄せて頬に手を当てた。
その憂い気な動作にも美麗な物があり、俺は胸が高鳴るのを感じた。
「これ以上帰ってこないなら、少し様子を見に……
どうしたの?」
じっと見ていたら気づかれたらしく、首を傾げられた。
見つめられている事に慌ててしまい、
飾り付けをしていた手を取り繕うように動かす。
「いえ、その……
困ってても、凪さん綺麗だなあと」
「はあ?」
言ってから後悔した。
すぐに口に出してしまうのは俺の悪い癖だ。
「誠司くん、今は私よりも蓮華の心配をしてちょうだい」
案の定、今度はムッとした顔で怒られた。
そんなんだから刑事も辞めるはめになったのよ、と
全然関係ない所で文句を言われる。
だけど、やっぱりそんなあなたも俺は好いていて。
もちろん蓮華も大切だけど、
蓮華の心配よりも怒ったあなたの顔に気を取られることを、
どうか許して欲しい。
「誠司くん、聞いてるの?!」
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