を々、愛しき化け物

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を々、愛しき化け物

蓮華は……はっきり言ってしまえば、不憫な子だ。 強かな子である、とも言える。 生まれた時、 少々込み入った事情で親戚に殺されかけた。 代わりに俺の知り合いに拾われ、この店で育てられている。 生後三ヶ月の頃、 色盲だという事が判明した。 代わりに他の感覚は超人的に優れている。 小学二年の頃、 同級生をかばって事故に遭い、右足を失った。 代わりにその同級生とは今でも親友だ。 何かを失っても、 代わりに何かを手に入れられるのは強かな事だと思う。 だが、それは逆に言ってしまえば何かを手に入れる度に 何かを失っている、という事で…… それを見ているのは、正直辛い。 だから俺だけは、 せめてこの店で蓮華を娘同然に扱ってきた俺達だけは、 蓮華から何かを失わせたりしないように守りたいと思う。 それは俺が日頃培ってきた思いだが…… 「ただいま!」 元気に帰ってきた蓮華の姿を見て、正直俺は目を疑わずにはいられなかった。 きっと後ろにいた凪と誠司も同じだろう。 泥だらけの擦り傷だらけで。 蓮華よ、今度は何を失ってきた。 そしてどうやったら、西洋の騎士を手に入れる事になったんだ……?
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