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僕の世界。
小さくて、ちっぽけで、時々踏みにじられて、無くなりかけてしまうような弱々しい世界。
僕はくだらない人間かもしれない。
ーーたいていの人はそう言うんだ。
お前を見ていると、どうしようもなく苛々するんだ、消えてしまえ、と。
身体を痛めつけられたりもする。
彼らは、僕の身体をボールを蹴るみたいな気軽さで、追い詰めるんだ。
僕はいつも悲鳴を上げている。
声にならない声で。雨粒が地面に吸い込まれていく時の、小さな動作音。
そういう音を、発するだけ。
意味が、無いから。
僕が叫んでみた所で、何も変わらないんだ。
僕が僕で居る限り。
この世に受けた生。
生きる事を、素晴らしいと感じている人間がこの世の中に、どれだけ居るというのだろう。
掛け値なしで。
追い詰める側の人間と、追い詰められる側の人間。
どちらも哀しいと思うんだ。
だって彼らの眼は、決して何かを映している訳では無いから。
漆黒の空に輝く、何億の星の輝きの音も、それを映す、薄金色の砂浜に流れる群青の波の形も。
もっと身近な物でも良いんだ。
例えば、僕の前に座る蜜を含んだ花のような女の子やーーゼリーだって良い。指紋ひとつ無いショーケースに並ぶ、光沢を放った繊細なそれ。崩してしまえば、あとはもうただの、砂糖水の残骸。
生きる糧も、正しい光りも、彼らの眼には映し出されていない。
僕は憐れかもしれないけど、彼らも憐れだ。
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