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実の所、最近は食べ物が喉を通らない。
お腹は空くのに、口に何かを入れた瞬間に後悔する。
とてもじゃないけど、僕には無理だ。どうして何かを食べようなんて思ったんだろう、と。
「力を付けなきゃ駄目よ。」
煮えたぎる力を宿した眼だ。
食べ物が、力を作るなんていかにも姉さんらしいと思う。
「あなたは、少し小さすぎる。」
「だって伸びないんだ。」
僕は少し憤慨して言った。
僕の身体は中学に入ったあたりから、なぜか成長する事を辞めてしまったようだ。
158cmーーそれが僕の身長。
これについては、もう諦めている。
「背丈の事じゃないの。もっと、そうね。要の纏う空気、ないようであるような、見えない意志。それがね、あなたは小さい。だから人の弱さを、敏感に嗅ぎ取る奴は解るの。あなたが抵抗しないって事が。」
僕はクラスメイトの、何人かの顔を思い浮かべた。
彼らは、なるほど、すぐに僕に眼を付けていた。
高校に入学して1週間も経った頃には、僕は彼らの標的になった。
姉さんの言葉は、ある程度正しいのかもしれない。
「でも、僕は彼らから何も受けていないよ。そんな事は、姉さんが心配する事じゃないんだ。」
姉さんは、柔らかく微笑む。
哀れみや、同情じゃない。
仕方ないわね、そういった表情で笑う。
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