始まりの朝

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「ふぁ~あ……朝か………」 少年『ルリス』は伸びをすると眠い目をこすりながら、ベッドから立ち上がった。 カーテンを開き、窓から外を見る。 「いつも変わらないなここは」 少年は毎日変わらない景色にうんざりしていた。 それもそのはず、彼はまだ外の世界を知らないのだ。 「あ~あ……暇だ。昨日も遅かったし」 彼は再びベッドに倒れこみぼやく。 少年の仕事は大工の見習いの為、ハンマーで釘を打ち込む作業を夜中までやっていたのだ。 作業が終わり、寝床についたのは、明け方に近かった。 ――まてよ。……今日は何か無かったか? 慌てて飛び起きた少年は昨日の会話を思い出す。 昨晩寝る前に彼は、大工の棟梁であり、親代わりの親方と呼ぶ『ガディス』から呼び出しをされていたことを今更ながら思い出したのだ。 「時計は……正午!?」 部屋の置き時計は頂点を指し示し、ルリスは風のように部屋を飛び出した。 「マズイ!マズイ!間に合わない~~~」 寝すぎたことに後悔しつつ、ルリスは全力で街を駆け回るのだった。 目指す場所はあの約束をした川のほとりへと……。
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