プロローグ

3/4
3055人が本棚に入れています
本棚に追加
/220ページ
   バスに揺られて、窓の外を流れる景色をぼんやりと眺める。  このバスが、何処へ向かっているのなんか知らない。  見知らぬ場所に行きたかっただけ。  行き先なんか関係ない。  終点まで行って、そこからまた考えるさ。  それまで暇だから、自己紹介でもしておくか。  俺の名前は、黒川夜月(くろかわやづき)。  月の綺麗な夜に産まれた、という理由で付けられた名前。  そんな名前をくれた両親は、去年事故で他界してしまった。  駆け落ちした二人だったから、肉親がいるのかどうかも俺は知らない。  だから、葬儀は俺だけで済ませた。  近所の人なんかも、チラホラと参列してくれたが、本当にひっそりとした式だったな。  兄弟もいないから、俺は一人。  俺が中学の頃に両親が新築で購入した家を売り、離れた場所にマンションを買った。  親の遺産と保険金、それと家を売った金で一括購入。  おかげで、ローンはない。  誰にも邪魔されない、自由気ままな一人暮らしだ。  高校を卒業して、三年になる。  仕事は俗に言うフリーター。  派遣の日雇いバイトなんかして、生活を送っている。  趣味はない。  敢えて言うなら、こんな風にふらりと出掛ける事かな。  名前が夜月なんていうからか、夜に出掛ける事が多い。  母親に似たせいで、よく女に間違えられるこの顔と、高1の時から伸びない163㎝の身長が、よけいに俺を女みたいに見せる。  
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!