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「それに…もう…いいんだ…」
「何でだよ。俺は…お前の大切な人を奪ったんだぞ…」
「今ここで…君を殺しても…慶子は喜ばない…そんな気がするんだ…」
藤沢の呼吸がどんどん弱くなっていった
「だから…そのかわり…俺のぶんまで…幸せになれよ…」
「わかったよ藤沢…わかった…」
佐々木はポケットから指輪を取り出し
藤沢の左手の薬指と小指に指輪をはめた
「…ありがとう…」
藤沢の左手をぎゅっと握り締め佐々木は呟いた
「佐々木君の手は…暖かいね…うらやましいな…」
藤沢はゆっくりと瞳を閉じた
「藤沢?藤沢君!本当にありがとう…」
佐々木は涙が溢れ止まらなくなった
そして、力無く立ち上がると、横井の持っていた銃を手にした
「ごめん藤沢君…俺は誰も助けられない…自分すらも…ごめんよ裕子…最後まで自分勝手で…」
一瞬彼女の微笑む姿が見えた気がした
そして…
パンッ!!
再び豊陵小学校に乾いた音が響いた
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