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しばらく朱雀を走らせていると、こぢんまりした茶屋についた。
「除晃殿、こちらでよろしいですか?」
「ここでござる。朱雀は店の前に繋げておけば良いでござるか?」
「そうですね…朱雀なら大丈夫ですから」
除晃と稀犁は朱雀から降りると、素早く稀犁が手綱を柱に括り付け、優しく朱雀の頭を撫でてから除晃の近くに行った。
「除晃殿…実は……茶屋に入るのが初めてで……」
「!…初めてでござるか?」
「はい…変でしょうか?」
「いや、変でないと思いますよ?」
「ありがとうございます」
その言葉を聞くと安心したのか、彼はニッコリと笑って除晃と店の中に入った。店に入るなり辺りをキョロキョロと見渡し始めた稀犁を見て、除晃は彼は初めてだらけで落ちつかないのだろうと思いながら椅子に座った。
「稀犁殿は何を食べられますか?」
「?…茶屋とは食べ物もあるのですか?」
「えぇ、甘い物だけなら何でもあるでござる」
「甘い物ですか……」
「!…もしや……苦手でござるか…?」
「いえ、甘い物は果物しか食べた事がなくて…」
「そうでしたか……では団子などいかがですか?」
「団子……ですか?」
「モチモチして美味しいですぞ?」
「…除晃殿が…選んだ物なら何でもいいです」
「では、団子を二人分頼みます」
店で働く男に注文してから、稀犁を見るとなぜか頬を赤く染めていた。
(可愛いな……)
除晃はそんな彼を見ながら団子が来るのを待っていた。
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