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「落ちろォォォッ!」
シンは叫びながら、フォースシルエットに換装した《インパルス》を駆って《ガイア》に迫った。
そのとき背後から強烈な熱線が放たれる。
MA(モビルアーマー)形態に変化した《カオス》が背部ビーム砲、兵装ポッドビーム砲をいっせいに発射したのだ。
が、それらのビームはシンを標的にしたものではなかった。
外壁の一点にすべてのビームが集中する。
さっきから《ガイア》の砲撃を受け続けていた自己修復ガラスが、ついに熱に耐えかねて融(と)け落ちた。
―――しまったッ…!
ぽっかりと空いた穴の向こうに宇宙が見えた。
付近は急速に減圧され、機体が突如発生した乱気流に翻弄される。
流出する空気とともに、黒い機体が穴をくぐって逃げ出すのが見えた。
懸命に機体を立てなおそうとするシンの横をすり抜け、《カオス》と《アビス》がそのあとに続く。
「くっそォッ!」
シンは歯を噛み締めた。
――やっとここまで追い詰めたというのに!
これてばやられっぱなしじゃないか!
せっかく手に入れた力を活かすこともできず、奪われるがままに翻弄される。
シンにとってそれは耐えがたいことだった。
義務感というより執着心に突き動かされ、彼はためらうことなく、外壁に空いた穴に身を踊らせた。
――絶対にあいつらを逃がすものか!
+++
「艦長!」
《インパルス》に続いてレイの《ザクファントム》までがプラントの外へ飛び出すのを見て、ミネルバ副官、アーサー・トラインが驚きの声を上げる。
「あいつら、なにを勝手に!外の敵艦はまだッ……」
困惑する副官の声にかぶせメイリンが鋭い声で報告した。
「《インパルス》のパワー危険域です!最大であと300!!」
「Σえぇッ!?」
アーサーの顔が青ざめた。
ミネルバ艦長、タリア・グラディスは一息ついたあと
毅然(きぜん)として立ち上がり告げる。
「《インパルス》まで失うわけにはいきません!」
彼らの行為は軽率だが無理からぬものとも思える。
こちらはこれほどの被害を被(こうむ)っているのだ。
だからこそ、彼らを見殺しには出来ない。
「――…ミネルバ、発進させます!!」
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