わたしのカエル

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 胸が痛い。おでこも痛い。精神的な痛みと、肉体的な痛みが相成って私を攻める。週末からは夏休みだというのに、どうしてくれるんだ。 (……夏休み)  そうだ、夏休みになったら、先輩を見れなくなる。きっとそうしたら、恥ずかしい私とおさらばできるかもしれない。ちょうどいい機会かもしれない。  胸の痛みになんて向き合わないで、バカみたいに楽しい夏休みを送ってやろうじゃないか。 「おはよう」  教室のドアをあけ、元気な声で入っていく。 「おはよう」  友だちが返してくれる。 「ちょ、ヨーコ、おでこ、血ぃ出てる」 「は、」  私はおでこに手を当てた。ぬるい液体。 「保健室行ってくる」  私はカバンを持ったまま、くるりUターン。  また階段を降りて、一階にある保健室に向かった。 「あ」 「お」  なぜまたいるんだ。私は固まった。 「よっちゃん、保健室行くんだろう」  意地悪な顔をしながら先輩は言う。 「俺もだ」  私は「奇遇ですね」と足を早めた。
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