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相変わらず雨は止まない。太陽を見ない日が、もう一週間も過ぎた。
退屈は募るばかり。
「もう少しで夏休みだね」
友だちとの会話に、とても遠くに思える「夏」の単語。
「うん、早く雨止まないかな」
かみ合わない会話を、あえて楽しむ。
「その前にテストだけど」
あ、いやな言葉。
「早く日程出ないかな」
「範囲もね」
うるさいくらい鳴り続いていた雨の音が、ふいに止んだ。
「……雨止んだ?」
私は窓の外を見やった。
「止んだ、止んだ」
友だちも窓の外を見て、少しはしゃいだ。
空は青く、太陽が照っていた。
「太陽って、こんなに眩しかったっけ……」
ふと下を見ると、あの「佐藤」がまた外に出ていた。今日は手にグローブをはめている。
「キャッチボールしようぜっ」
「おうよっ」
相変わらずぐしゃぐしゃの地面だけど、草に垂れた水が太陽に反射して、キラキラしていた。
(眩しいな……)
……佐藤先輩、か。
私の中に、やわらかな芽が出た。
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