90人が本棚に入れています
本棚に追加
「保健室行くかぁ」
先輩は急にお調子者になった。なんだその変わり身の早さは。
「保健室はそこ入って右曲がって右ね」
「知っています」
私はもらった絆創膏をペリっとはがした。
「悪いところは頭くらいですから気にせずに」
どうしてかわいくない私。よよよと倒れこむチャンスが。第一印象最悪だな。
私はカバンから鏡を出すと、少し血の出たおでこにつけようとした。
「ストップ」
ドキリ。
腕が掴まれる。
「水で洗ってから絆創膏はつけるっ」
「はい」
顔がカッカッと熱くなるのを感じた。なんだこれは。
「水道はまっすぐ行って左ね」
「知って、います」
恥ずかしい。なんだかとてつもなく恥ずかしい。腕を振り切りたいけど、力が入らない。逃げれない、逃げたくない?
「さ、洗うよ」
先輩は私を引っ張る。胸が熱い、全身が熱い。ドキドキが、破裂しそうだ。
私は下を向いた。自分を、鼓動を落ち着かせるために。
最初のコメントを投稿しよう!