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朝日
私はいつもと違い、裕太の腰に手を回した
一瞬、緊張したように裕太が固まるのがわかったが裕太は何も言わず自転車を漕ぎ出す
キィィィ…
さびた車輪が悲鳴を上げ、私たちは出発した。
自転車の後ろでもたれ掛かりながら、私は駅へ向かっていた。その間、裕太とはいろんな話をした。いつも通りの会話。
ただ一つ違ったのは裕太も私も、示し合わせたように引っ越しや転校なんかの話はは一切しなかった。
まるで、サヨナラから目を逸らすように。
やがて来るバイバイなんていらないという風に。
私達は話しながら、馬鹿みたいに笑いあった。
ただの強がりだってわかっていた
駅に行く途中に、治国坂という坂がある。
これは地元住民から、地獄坂、もしくは遅刻坂と呼ばれている、いわゆる心臓破りの坂だった。
『よし!いけー☆』
私は自転車の荷台で応援する
『…っうるさい、坂道くらいっ…降りろよ』
『やだ☆後でなにか奢ってやるからさっ☆…ほらほらっもうちょっと!後少しだよ!』
今は少しでも長く裕太にもたれ掛かっていたかった
裕太のぬくもりをいつまでも忘れないように
私の声を聞いて、裕太は更にスピードをあげて坂を上っていった。
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