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『ねぇ…静かだね』
街はまだ眠っていた。少し張り詰めたような冷たい空気を吸いながら私は呟いた。
『ああ…っ。そう…だなっ…』
裕太はペダルを踏みながら短く答える。
『なんかさ、今世界中に二人だけみたいだね?』
紛れもない本心。
世界中に二人きり。そうだったらどんなに良かったか。
『……っ』
何かを言いかけて、裕太が言葉に詰まる。
不思議に思い目線を追うと、そこにはキレイな朝焼けが空に広がっていた
朝焼けの金色の空
(これ…まるで…)
私と裕太にこの街からの最後の贈り物を貰った気がした。
…クスッ
私は笑ってしまった。
嬉しかった。
最後に二人で見た朝焼けがこんなにキレイで
いつかまた会った時に、いい話のタネになるだろう
《覚えてる?あの時みた朝焼けはきれいだったよね?》
次に会ったときに言ってやろうと思った
私はそのまましばらく朝焼けを見つめていた。
小さく震える裕太の背中には気付かないふりをして。
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