車輪の唄～girl～

駅

『切符買ってくる』

駅に着くと裕太に鞄を預け、私は切符売場へと向かった。

券売機の中で一番端の一番高い切符を買う。

自分でもどこまで行くのかわからない片道切符。
券売機が早く取れとばかりにピーピーと電子音で主張していたが、私は取るのを少し躊躇った。

戻ろうとした時、さっき買った切符の反対側にある一番安い入場券のボタンが目に入る。

（最後のチャンス…かな…）

私は二枚の切符を持って裕太の所に戻った。

『お待たせ』

『おう』

裕太が私に荷物を渡す。

『…じゃあ…その…元気で。』

やっぱりここでお別れのつもりらしい。

私は手を差し出す。
手を開いて裕太の前に入場券を差し出す。

『なんか奢るって言ったでしょ？』

黙った裕太に向かって私は手を差し出したまま言う

『最後まで見送ってよ。…ね？』

（私はまだ…大切な事…言ってない…）

実際受け取ってくれるかどうかは賭だった。
私と裕太は黙ったまま見つめ合う

やがて、

『…安いんだよ』

少しぶっきらぼうに入場券を受け取る裕太。

（良かった…）

安心したのを悟られたくなくて

『文句言わない！奢ってやっただけありがたいとおもえっ☆』

とか言いながら改札の方へと走った。

走りながら、私は安心と嬉しさで泣きそうになった。