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「てんめっ、修一!!放せ、この裏切り者!!」
「まぁまぁ。郁美もいるんだし、平気だろ」
「あのなぁ…!!」
バキッ…!!
子気味良い音がして、俺がその方を見ると。
「今は、あたしらが美月と話してんだ。下心丸出しの男子どもは散りな!!」
郁美が、男子どもを睨み付けて、女子たちと美月を守っていた。
「郁美様、素敵!!」
「美月ちゃんのこれからの学園生活の平穏のため!!潰しちゃってください!!」
挙句、女子たちから軽く物騒な歓声があがっている。
(……怖ぇ…)
「修一……ごめん、色んな意味で助かった…」
言いながら、修一の腕から解放される。
「だろ?つーわけで今度ジュース奢りな」
「くっ…仕方ない」
修一は運動部で、見た目は細めなのに筋肉がかなりついてる。
「いくら俺でも、お前に本気で羽交い締めにされたら、生命の危機だぜ…」
「ははっ、気にすんな~」
「普通気にするだろ!!」
なんて、俺たちがふざけている間の数分の内に。
男子たちは全員、郁美に伸されていた。
「同じクラスだからって、甘くしてもらえると思うなよ。下心丸出し野郎は女の敵だ!!」
「きゃー!!郁美様ー!!」
「格好良すぎですぅー!!」
無駄に黄色い歓声があがる。
「……相変わらず、人気だな…」
「あぁ…。近づくと、女子たちの目力で殺されそうになるぜ…」
修一が、深い溜め息を吐く。
「…苦労してんな」
「あぁ、そう思う…。野郎どもならまだしも、女子だからな……手が出せねぇ」
「…まぁ……頑張れよ」
…なんだか、深刻になりそうな雰囲気だったから、テキトーに流すことにする。
「テキトーだな、お前…」
「まぁな…俺だって、色々あんだよ」
美月のことで手一杯なのに、修一の相談事まで考えてる余裕はない。
深い溜め息が、修一と重なった。
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