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「いいから、座ってないで来て下さい!!アンタの押印が必要なんですよ!!」
「え~…。もう、仕方ないな…」
会長は、しぶしぶといった様子でソファーから立ち上がると、朝日と一緒に少し離れた机へと移動して行く。
「………」
「…葉月さん?」
わたしは、隣で赤くなっている葉月さんに気付いた。
「どうしたんですか?」
「え…っ?…え、ええと……」
ビックリしたような反応をして、更に真っ赤になっていく葉月さんを見て、すぐに判った。
「葉月さん、会長が隣にいたことで、照れてるんですね?」
「み、美月ちゃん!!」
「だって、真っ赤です」
「っ……!!」
葉月さんは、赤くなった頬を抑える。
葉月さんを挟んで、わたしの反対隣にいた会長は、まるで隙間が許せないとでもいうように、葉月さんに密着していて。
好きなら、赤くなってもおかしくないけれど。
(それにしても…葉月さん、凄く照れてる……可愛い)
そんなことを思いながら、わたしは微笑ましい気持ちで葉月さんを見つめていた。
「文月、そういえば今日出た宿題終わったか?」
「え、宿題って家でやるものじゃな「文月はすぐ忘れるだろ」
「むぅ…」
言葉を途中で遮られた上に図星を突かれたらしい文月ちゃんは、唇を尖らせた。
「……どうせ朝泣きついてくるなら、今終わらせた方がお互い楽だろ」
「え、皐月くん宿題終わったの!?ていうか教えてくれるの!?」
「当然。ほら、さっさとやるぞ」
「うん!!」
(皐月くんは、何ていうか、会長とは少し違う愛情表現の仕方なのね)
向かい側のソファーから来る、これまた甘い雰囲気を見て、わたしは一人和んでいた。
「美月!お前も何か言え!!」
そんな時に、突然朝日に声を掛けられても。
「え、何を?」
経緯を見ていなかったから、話が判らない。
「仕事押し付けられて嫌じゃないのか!?」
「え?うん、別に」
「なっ…!!」
「ほら、美月ちゃんを見習って朝日くんも頑張って♪」
「…最悪…」
その時、朝日の周りに何だかじめじめしたものを感じたのは、わたしの気のせいじゃないと思う…。
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