放課後の生徒会室

6/9
前へ
/91ページ
次へ
「あー…やっと終わったぁ~」 机にグターッと突っ伏して、力無い声で言う朝日。 「大丈夫?」 「大丈夫ならこんな体制になってねぇよー…」 わたしが近づいて訊いてみると、朝日は力無く顔を上げて、今度は気の抜けそうな声で言った。 (……こんな大きな子供のあやし方なんて、知らないんだけど…) 「なぁなぁ、この後ゲーセン行こうぜ」 「はぁ?」 朝日が突然起き上がって、瞳をキラキラさせながら言ってきた。 (さっきの萎れた感じは、一体何だったの…?) 私は少し呆れて、小さく溜め息をついた。 すると、文月ちゃんに勉強を教えていた皐月くんが、顔を上げて此方を見てくる。 「先輩。その前に、生徒会の役割を美月さんに教えてあげたらどうだ?」 「そういえば、教えてなかったよね~」 文月ちゃんも顔を上げて、口を挟む。 「……文月、無駄口叩いてないで早く終わらせろ。いつまでたっても帰れない」 呆れたような皐月くんの言葉で、ふと時計を見る。 気付けば、時刻は6時を回っていた。 「はーい……」 「はぁ…。集中力が途切れ過ぎなんだよ」 「うっ…ごめんなさい…」 開始時刻から約3時間も休憩無しでやっているのに、あまり進んでいない文月ちゃんを、皐月くんの言葉は容赦なく責めていく。 (何だか、可哀想になってきた…) 「……でもまぁ、今日はもう遅いし、此処で集中出来ないなら後は家でやるか」 「わ、ホント!?やったぁ!!」 文月ちゃんは、とびきりの笑顔で笑って、帰り支度を始めた。 その笑顔を見た皐月くんの無表情が、少しだけ緩む。 それは、大人びて見えていた皐月くんが、歳相応に見えた瞬間で。 初めて見る皐月くんの笑顔と文月ちゃんの笑顔を見たわたしは、先刻とは少し違う意味で、微笑ましく思っていた。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加