55人が本棚に入れています
本棚に追加
美月side
ピンポーン…
「ん?……誰だろ、新聞か勧誘の人かな?」
自室のベッドでゴロゴロしていた体を起こす。
わたしは、不登校気味……というより、完全に不登校だ。
あんなところ、行きたくない。
居場所を、見失ってしまった。
ピンポーン、ピンポーン…
「お母さんも出掛けてるし……無視でしょ」
誰もいないリビングに行くには、勇気がいる。
たった独り、取り残されたみたいな気がして。
通り過ぎるだけでも、キツい。
……それなのに。
ピンポーン、ピンポンピンポンピンポンピンポンピン、ポーン……
「しつこいっ…!!」
いくら何でも鳴らしすぎだ。
「……仕方ないなぁ」
これだけしつこくチャイムを鳴らす人だ。
急ぎの用件がある人か、もしくは悪戯か。
(どちらにせよ、わたしが玄関に行くまでは、少なくとも独りじゃないよね)
ゆっくり立ち上がって、部屋から玄関に向かう。
──この時もし居留守を使っていたら、今頃わたしは、どうなっていただろう。
「…はい?」
「如月だよなっ!ほい、プリント!!」
苛立った声でドアを開けた瞬間、笑顔でプリントを差し出すこの人──望月 朝日に出会わなければ。
わたしはきっと、存在する意味を、理由を、居場所を。
見失ったままだったと思う。
それだけ、この出会いは、わたしにとって凄く影響のあることだった。
最初のコメントを投稿しよう!