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「そ、そうですけど……」
(いきなり何なの?)
内心かなり警戒しつつも、取り敢えず、彼に名前を尋ねることにする。
「貴方は、誰ですか?」
着ている制服は、わたしと同じ高校のもの。
1年生の頃からいじめを受けて、あまり学校に行かなくなってから、2年生になっても何回かしか行っていない。
そのせいだと思うけど、当然この人のことも覚えがない。
(何で、この人はわたしのことを知ってるの?)
「俺は望月朝日!!如月と同じクラスで、今日から席が隣になったんだ!!」
「え?……あ…そう…なんですか…?」
(ごめんなさい、同じクラスだったなんて覚えてないわ…)
目の前で無邪気そうに笑う彼を見ていると、覚えていなかったことに少し罪悪感が芽生える。
「お前、なかなか来ないんだもんな~。プリント山盛りだったから、持って来た!!」
「あ…ありがとうございます…」
(よくわからないけど、悪い人ではない…みたい?)
何となく──罪悪感があったからかも知れないけれど、そう思った。
悪い人ではない、悪い人ではないだろうけれど。
(……人は、怖いの)
「ごめんなさい。わたし、もう高校中退しようと思ってて……貴方には悪いんですけど、プリントとかいらないんで……」
言いながら、差し出されていたプリントを彼に押し返す。
「……ちゅう、たい?」
茫然と、プリントを押し返されたまま、彼は初めて聞く言葉に対するように、ゆっくりと繰り返した。
(まずい、怒らせた…?)
「えっと……本当にすみません、さようなら」
怖くなって、ドアを閉めようとした瞬間。
いきなりドアに足をはさめられ、それを妨害された。
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