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「望月くん、サイダーで良いですか?」
「おー!俺、サイダーすっげぇ好きなんだ!!」
苗字が正しいかどうか不安だったけれど、当たっていたらしく、元気に受け答えをしてくれて安心した。
「そうですか、良かったです」
(子供みたいに無邪気だな…)
そう思いながら、わたしは望月くんにコップを渡す。
「つか、朝日で良いぜ?俺も美月って呼ぶから。敬語もいらねぇし」
美味しそうにサイダーを飲みながら、彼は満面の笑みで言う。
「あ…うん」
何となく、緊張が和らぐ。
(不思議な男の子…)
「……でさ、何で中退なんかすんだよ?」
「…唐突だね」
あまりにも唐突に本題に入ったことで、つい苦笑が漏れた。
「だって気になるんだから仕方ないだろ」
「…わかった」
どうしてそんなに気にしてくるのか判らないけど、私は溜め息を一つ吐いて、彼に話し始めた。
「わたしは人見知りをするタイプで、なかなか周りの人と仲良くなれなくて……一人だった」
話し掛けてもらえないと、人と仲良くなることも、慣れることさえも出来ない。
(…なんて、情けないんだろう)
「それが大人しく見えたのか、わたしはいじめの標的にされた……それから学校にあまり行かなくなったの」
「でもさ、ウチの学校は2年になる時にクラス替えがあるじゃんか?なのに何で来ねぇんだ?」
「……どんなに頑張っても、人見知りは治らなかった。また1年の時みたいに、そのせいでいじめられるのが怖いの。教室に行く勇気なんて、わたしにはない…」
「行ってみなきゃわかんねぇじゃん」
「だから…!!」
「美月は逃げてるだけだろ」
朝日は私にそう言うと、突然立ち上がった。
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