55人が本棚に入れています
本棚に追加
朝日side
「んじゃ。俺、先に行くな!!」
「おう」
兄貴に見送られながら、スポーツバックを朝から物置で探しまくった二人用のチャリ(自転車)のカゴに入れる。
と、少し遅れて家の中から弟の太陽が出てきた。
「朝日兄!!はい、食パン」
「お、サンキュ~」
受け取った食パンを口にくわえると、俺は上機嫌で美月の家に向かった。
ピンポーン…
実は、俺の家と美月の家は隣同士でだったりする。
(迎えに行くのにかなり楽な距離なんだよなぁ~)
チャイムを押して、4分の1くらい残っていた食パンを口に放り込んだ時、ドアが開いた。
「あら。美月のお友達?」
そこからひょいと、大学生くらいのお姉さんが顔を出した。
後ろには、中学生くらいの女の子もいる。
「……っ、同じクラスの望月朝日です!美月さんを迎えに来ました!!」
何とかパンを呑み込んでから、挨拶をする。
(ちょっと危なかった…)
「あら~。元気いっぱいね~♪」
俺が内心で冷や汗をかいていると、その後ろから優しそうなお母さんが出てきた。
「でもごめんなさいねぇ。美月ったら、まだ支度終わってないのよ~」
困ったような表情で、美月のお母さんは家の中を振り返る。
「てことは、支度はしてるんスよね?」
「えぇ。あの子が星見学園の制服を着ているの、久しぶりに見たわ~」
「マジっすか?俺も見るの久々で…」
ガチャ
美月のお母さんの言葉で少しはしゃいだ俺は、言葉を途中で切った。
ドアの奥から、長い髪をポニーテイルにした美月が、出てきたから。
(…一瞬、見惚れちまった…)
「…あっ、お、おはよ、美月!!」
「…お、おはよう」
我に返って、顔が赤くなってないか心配しながら挨拶する俺に、美月は少し赤くなりながら返してくれる。
…つまり、俺も顔が赤くなっているんだろう。
「二人とも、行ってらっしゃい」
「行ってきます!!」
「…行ってきます」
美月のお母さんに見送られながら、俺は二人用のチャリの後ろに美月を乗せて、学校に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!