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「美月!!お前もなんとか言え!!」
朝日がわたしに助け船を求めてきたけれど。
わたしは特に何か言わなくても良いと思っていたので、聞き返してしまった。
「え?何で?」
「勘違いされてんだぞ!!お前、嫌じゃないのか!?」
「え、うん。別に?」
「なっ…!!」
朝日が不服そうにそう言った時、わたしはふと思ったことを呟く様に口に出してしまった。
「…前にも、こんなやりとり、あったな……」
「へ?」
聞こえたのか否か、それとも突然わたしが顔を伏せたからなのか、朝日が間抜けな声をだして顔を覗き込んできた。
「…美月?どした?」
朝日の優しい声。
心配そうな表情。
でもそれは、今のわたしにとっては、一番辛い。
「…何でもないよっ。大丈夫!!」
わたしは無理矢理笑顔を作って顔を上げる。
朝日以外の四人は、目を伏せたり悲しそうに顔を歪めたりしていて。
朝日はその四人の様子に、心配そうな顔でわたしを見つめてきた。
「……っ…ごめん、朝日…やっぱり、辛いよ……」
忘れられる。
それはその人の中から自分がいなくなるということ。
その人の中から、今まであった自分の存在が消えてしまうということ。
朝日に見つめられてそう実感した瞬間、わたしの中で今まで抑えていた感情が、枯れた筈の涙と一緒に、一気に溢れだした。
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