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「…あの…」
「ん、どした?」
自己嫌悪から我に返ると、美月が改まった様子でベッドの上に座り直していた。
俺も真剣な美月の様子を見て、ベッドから下りて椅子に座り直す。
「…先刻の、ことなんだけど…」
「…記憶のことか?」
美月が言葉を途中で切った時に俺の頭に浮かんだことを言うと、美月はバツが悪そうに目を泳がせながら、ゆっくりと頷いた。
「…その…さっきは、記憶を無くしたのはわたしのせいなのに、責めたりしてごめんなさい…」
「いいよ、美月のせいじゃない。寧ろ俺を責めて正解だしな」
「朝日は悪くないよ、わたしがいなければよかっ…──!?」
俺は、必死に言葉を並べているのを、わざと途中で遮るように。
美月の腕を、引っ張った。
「あさ、ひ…?」
案の定、身体にあまり力の入らない状態でベッドの上に座っていた美月は、落ちる様な形で俺の両腕の中に収まる。
「まだ、美月のこと思い出せてない俺が言うのもなんだけど……。俺がしたこと、無駄みたいに言うなよ。正直、そっちのが辛い」
「…朝日……」
ぽんぽんっと、軽く頭を撫でてやりながら、ニヤリとした笑顔を浮かべて。
「自分ばっか責めてんじゃねーよ、バーカ」
言いながら、俺は美月を抱き締めた。
「…うん……ごめんね、朝日…」
俺たちは、暫く見つめ合って。
……どちらからともなく、そっと、キスを交した。
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