美月の涙

14/15
前へ
/91ページ
次へ
「…あの…」 「ん、どした?」 自己嫌悪から我に返ると、美月が改まった様子でベッドの上に座り直していた。 俺も真剣な美月の様子を見て、ベッドから下りて椅子に座り直す。 「…先刻の、ことなんだけど…」 「…記憶のことか?」 美月が言葉を途中で切った時に俺の頭に浮かんだことを言うと、美月はバツが悪そうに目を泳がせながら、ゆっくりと頷いた。 「…その…さっきは、記憶を無くしたのはわたしのせいなのに、責めたりしてごめんなさい…」 「いいよ、美月のせいじゃない。寧ろ俺を責めて正解だしな」 「朝日は悪くないよ、わたしがいなければよかっ…──!?」 俺は、必死に言葉を並べているのを、わざと途中で遮るように。 美月の腕を、引っ張った。 「あさ、ひ…?」 案の定、身体にあまり力の入らない状態でベッドの上に座っていた美月は、落ちる様な形で俺の両腕の中に収まる。 「まだ、美月のこと思い出せてない俺が言うのもなんだけど……。俺がしたこと、無駄みたいに言うなよ。正直、そっちのが辛い」 「…朝日……」 ぽんぽんっと、軽く頭を撫でてやりながら、ニヤリとした笑顔を浮かべて。 「自分ばっか責めてんじゃねーよ、バーカ」 言いながら、俺は美月を抱き締めた。 「…うん……ごめんね、朝日…」 俺たちは、暫く見つめ合って。 ……どちらからともなく、そっと、キスを交した。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加