美月の涙

15/15
前へ
/91ページ
次へ
──瞬間、俺の頭の中に、映像が流れた。 静かな公園で、動きもせずにブランコに座っている、俺と同い年くらいの女の子。 通りかかる人々は、その女の子には見向きもしないで、通り過ぎて行く。 その中で、公園の入口の前で、その女の子を見つめている人影があった。 (…あれは…俺?) 高一の時の、俺だ。 よく見ると、その女の子は美月だった。 映像の中での俺は、美月に声をかけようとするけど、修一と京一に呼ばれて、何度も振り返りながら、そのまま帰って行った。 (…そうだ。俺はこの時、美月を知ったんだ) あの今にも壊れてしまいそうな瞳を、何とかしてあげたいと、この時に思った。 「…さひ……」 ずっと、聴きたかった声。 (…俺、何で忘れてたんだろう…) 美月との思い出が、どんどん頭の中に浮かんできて。 (俺……俺は、あの時から、ずっと…) 「……朝日!!」 「おわっ!?」 突然の大声に驚いて腕の中を見ると、心配そうな顔をした美月が、俺を見上げていた。 「大丈夫?ボーッとしてたけど」 「…あぁ、大丈夫だ」 俺は、出せるだけの優しい声で答える。 美月は瞬きを何度かして、首を傾げて不思議がっている。 (そうだ。この時から、俺は……)
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加