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──瞬間、俺の頭の中に、映像が流れた。
静かな公園で、動きもせずにブランコに座っている、俺と同い年くらいの女の子。
通りかかる人々は、その女の子には見向きもしないで、通り過ぎて行く。
その中で、公園の入口の前で、その女の子を見つめている人影があった。
(…あれは…俺?)
高一の時の、俺だ。
よく見ると、その女の子は美月だった。
映像の中での俺は、美月に声をかけようとするけど、修一と京一に呼ばれて、何度も振り返りながら、そのまま帰って行った。
(…そうだ。俺はこの時、美月を知ったんだ)
あの今にも壊れてしまいそうな瞳を、何とかしてあげたいと、この時に思った。
「…さひ……」
ずっと、聴きたかった声。
(…俺、何で忘れてたんだろう…)
美月との思い出が、どんどん頭の中に浮かんできて。
(俺……俺は、あの時から、ずっと…)
「……朝日!!」
「おわっ!?」
突然の大声に驚いて腕の中を見ると、心配そうな顔をした美月が、俺を見上げていた。
「大丈夫?ボーッとしてたけど」
「…あぁ、大丈夫だ」
俺は、出せるだけの優しい声で答える。
美月は瞬きを何度かして、首を傾げて不思議がっている。
(そうだ。この時から、俺は……)
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