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「…ねぇ、南瓜祭、どうなるのかな?」
「うーん…俺は明後日で退院だけど…」
「えぇ!?裂傷もあったって…!!」
問いかけに答えた思いがけない朝日の言葉に、わたしは驚きの声をあげる。
「俺は身体鍛えてっから、回復力が半端じゃないんだよ」
「回復力と身体鍛えることは関係無いでしょ!?」
「んーと……美月は寧ろ身体弱い方だからなぁ…南瓜祭、間に合うかな~…」
わたしの言葉を流して、わざとらしく話題を戻そうとする朝日に、わたしは敢えて突っ込まないことにした。
「……どうなるのかな、南瓜祭」
「俺たち、買い出しの途中でこうなっちまったからなぁ…」
「うん…」
みんなに迷惑をかけてしまったことが申し訳なくて、俯く。
「こら。落ち込むなよ、美月。中止になんかなんねーから」
「え…っ?」
顔を上げると、朝日はわたしに優しい笑顔を向けた。
「見舞いに来てないところを見ると、会長たちが俺達の代わりに働いてんだろうし」
「会長達が?」
「あの人達、普段はあんなんだけど、一回スイッチ入るとマジすげぇから」
「そ、そうなの?」
ニッと悪戯っぽく笑った朝日だけど、そんな会長達を想像出来ないわたしは、驚きを隠せない。
「それに、さっき来てた修一達も」
「え、修一くん達も!?」
「忙しい中で、事故に遭っちまった罪悪感を、俺たちが感じないように。早めに仕事終わらせて、見舞いに来てくれてんだと思うぜ?」
「あ……」
(だから先刻、朝日は落ち込むなって…)
「なぁ、美月。美月が見つけた、美月の居場所はさ。みんなにとっても、俺にとっても、すげぇ大事なんだ」
わたしの髪を、ゆっくり、優しく撫でながら、朝日は続ける。
「もう、美月がいないと、みんなダメなんだよ。勿論、俺も」
「っ……」
段々と視界が潤んでいって、朝日の顔が滲む。
「居場所と、その居場所に存在する理由。見付かったろ?」
「うん……うん…っ!!」
今度は嬉しくて泣き始めたわたしの頭を、朝日は優しく抱き込んで、撫でてくれた。
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