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泣き止んでも、朝日はわたしを抱き締めたままでいてくれていた。
「…朝日」
「ん?」
「……大好き」
恥ずかしくて、それでも、言いたくて。
わたしは朝日の胸に顔をうずめながら、小さく呟いた。
「……俺も」
朝日もわたしと同じくらいの大きさの声で、耳元で囁いてくれる。
「…わたしも早く怪我を治して、退院しなくちゃ」
「だな。みんな待ってるし」
朝日は、とびっきりの笑顔を見せてくれる。
そして、小さな声でボソッと、付け足すように言った。
「…美月に毎日会えないなんて、俺、禁断症状出そうだし」
「え……っ!?」
「いやっ、その……!!」
朝日は聞こえないように言ったつもりだったようで、わたしがそう返すと、朝日は耳までボッと赤くなり、顔を背けた。
わたしまで、つられて顔が熱くなってしまう。
「~~っ!!な、何だよ、悪ぃかよ…!!」
「わ…わたしも…」
「へ?」
本気じゃないだろうけど、怒った顔をしていた朝日は、毒気を抜かれたような顔になる。
「わたしも、禁断症状…出るかも」
「え…」
わたしは、急に恥ずかしさが込みあげてきて、誤魔化すように叫んだ。
「か、南瓜祭!!」
「え…あ、そ、そうだ!!南瓜祭!!」
わたしたちが今更な照れ隠しで叫んでいると、病室のドアが開いて、看護師さんが入ってきた。
「如月さん。如月さんの怪我は、打ち身だけで大したことは無いそうなので、明後日で退院していいですよ。……あと、病院ではお静かに」
口早にそう言って、看護師さんはわたしの病室を出ていった。
わたしと朝日は、暫くポカン…と病室の閉められたドアを見つめて。
「ぷっ……!!」
「ははっ…!!」
また、大笑いした。
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