出会い

9/10
前へ
/91ページ
次へ
ガラッ 「はよ~っす!」 「よっ!朝日!!」 「ちすっ!」 「おはよ、朝日!」 ドアを開けて教室に入ると、次々にクラスメート達が挨拶をしてくる。 俺は慣れているけれど、美月はそうじゃなくて。 ビクッと、一瞬。 隣にいる美月の身体が小さく揺れたのを、俺は見逃さなかった。 「美月…大丈夫か?」 「………あ…」 美月の表情は、少し青くなっていた。 (まだ、ダメだったか…?) 美月に無理をさせているのは判っている。 けど、少し荒療治でも、強引だとしても。 (恨まれても良いから、学校の楽しさを思い出して欲しいんだ…) 「……おい、朝日。その子は?」 俺の様子を見兼ねてか、友達の郁美が近づいて来た。 「…ずっと休んでた、俺の隣の席の如月美月だ!」 俺はグイッと美月を前に押し出す。 「っ……お、おはようございます…」 美月は、少しビクつきながらも、俯かなかった。 しっかり前を向いて、緊張した様子で挨拶した美月を。 (…すっげぇ、可愛い…) 俺は、そんなことを考えながら、見つめていた。 「あぁ、おはよう。てか、何で敬語?」 「あ……それは…その…」 笑顔で返して、続けて質問する郁美の反応に、美月は少し戸惑っているようで。 我に返った俺は、慌てて口を挟む。 「あ、美月はさ、人見知り激しいんだよ」 そう言って、美月の一つにまとめられた髪をほどいた。 「あ、朝日!?何して…!!」 「慣れると、どこにでもいる普通の女子高生だ!!」 「わ、ホントだ~」 「わぁ~髪キレー!」 女子が次々と集まって来て、すぐに美月は囲まれる。 「え…あ、あの…っ?」 その状況に、戸惑う美月。 「お前ら、如月困ってんじゃん。ゆっくり慣れてってもらえよ」 いつの間にか俺の隣に来ていた、幼馴染みの修一が苦笑しながら言う。 「んじゃ、俺ももっと慣れてもらいに「お前はもういいだろ」 修一以外の、クラス全員の男子から待ったが入る。 「なっ…何でだよ!?」 「あんな可愛い子だぞ!!朝日にばっか美味しい思いさせて堪るか!!」 「修一、お前も!!モテんだから、たまには俺らにも美味しいとこ分けろ!!」 「朝日でも見張っとけ!!」 「おー」 流石にこれだけの人数を相手にするのは面倒だと思ったのか、修一は素直に俺の両脇に腕を挟んで羽交い締めにした。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加