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ガラッ
「はよ~っす!」
「よっ!朝日!!」
「ちすっ!」
「おはよ、朝日!」
ドアを開けて教室に入ると、次々にクラスメート達が挨拶をしてくる。
俺は慣れているけれど、美月はそうじゃなくて。
ビクッと、一瞬。
隣にいる美月の身体が小さく揺れたのを、俺は見逃さなかった。
「美月…大丈夫か?」
「………あ…」
美月の表情は、少し青くなっていた。
(まだ、ダメだったか…?)
美月に無理をさせているのは判っている。
けど、少し荒療治でも、強引だとしても。
(恨まれても良いから、学校の楽しさを思い出して欲しいんだ…)
「……おい、朝日。その子は?」
俺の様子を見兼ねてか、友達の郁美が近づいて来た。
「…ずっと休んでた、俺の隣の席の如月美月だ!」
俺はグイッと美月を前に押し出す。
「っ……お、おはようございます…」
美月は、少しビクつきながらも、俯かなかった。
しっかり前を向いて、緊張した様子で挨拶した美月を。
(…すっげぇ、可愛い…)
俺は、そんなことを考えながら、見つめていた。
「あぁ、おはよう。てか、何で敬語?」
「あ……それは…その…」
笑顔で返して、続けて質問する郁美の反応に、美月は少し戸惑っているようで。
我に返った俺は、慌てて口を挟む。
「あ、美月はさ、人見知り激しいんだよ」
そう言って、美月の一つにまとめられた髪をほどいた。
「あ、朝日!?何して…!!」
「慣れると、どこにでもいる普通の女子高生だ!!」
「わ、ホントだ~」
「わぁ~髪キレー!」
女子が次々と集まって来て、すぐに美月は囲まれる。
「え…あ、あの…っ?」
その状況に、戸惑う美月。
「お前ら、如月困ってんじゃん。ゆっくり慣れてってもらえよ」
いつの間にか俺の隣に来ていた、幼馴染みの修一が苦笑しながら言う。
「んじゃ、俺ももっと慣れてもらいに「お前はもういいだろ」
修一以外の、クラス全員の男子から待ったが入る。
「なっ…何でだよ!?」
「あんな可愛い子だぞ!!朝日にばっか美味しい思いさせて堪るか!!」
「修一、お前も!!モテんだから、たまには俺らにも美味しいとこ分けろ!!」
「朝日でも見張っとけ!!」
「おー」
流石にこれだけの人数を相手にするのは面倒だと思ったのか、修一は素直に俺の両脇に腕を挟んで羽交い締めにした。
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