ネット恋愛

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 ネット恋愛という言葉は、知らない人間にとっては理解できない単語かもしれない。恋愛とは顔と顔、身体と身体でするものだという固定観念がある。それは確かだろう。現実の体験は仮想世界でのそれよりはるかに強い。だけど、知り合うきっかけという観点で言えば、友達の紹介でも文通でも、ダンスクラブやイベントでも、メールでもインターネットでも変わらない。ただ、仮想世界の決定的な違いは、相手の顔はおろか、年齢も性別もわからないということだ。  俺がインターネットを始めたのは、大学受験の頃だ。ただ勉強ばかりしていては気が滅入るので、気晴らしに始めたにすぎない。見るサイトもゲームの攻略サイトばかりだった。しかし、ある攻略サイトにチャットが設置してあったことが、俺の人生を大きく変えることになる。  最初はチャットというものが何かよくわからなかった。誰でも閲覧できる掲示板と違って、参加ボタンを押さないと参加できないから、敬遠していた。でも、そのチャットの会話を見た時、あまりのアットホームさに、つい参加ボタンを押してしまった。  そのチャットが一味違ったのは、男女の仲がとてもいいことだった。出会い系サイトのような明らかな恋愛目的ではなく、純粋に会話していたことに惹かれた。俺は、生まれてから18年間、まともに女の子と会話したことがなかったから、余計に憧れたのかもしれない。  しかし、チャットは初めてだったし、元々会話が下手な俺は、すでに仲良くなっている人たちの中に入っていくことができなかった。幸運だったのは、それを察して輪の中に入れてくれた人がいたことだ。4歳年上の女性だった。それから、俺はそのチャットに入り浸るようになった。  そのチャットには、男女ともに15~25歳の人間が参加していた。中には、すでにカップルが成立している男女もいた。それまで彼女もいたことのない自分には、何故チャットで恋人同士になれるのかよくわからなかった。ただ、明らかにラブラブだとわかる会話を見せ付けられれば、うらやましくもなる。それでも、俺はただ女の子と会話できるだけで満足していたから、別にチャットで彼女を作りたいなんて思わなかった。  そんな自分の気持ちに変化が訪れたのは、ある女の子と出会ってからだった。その女の子はまだ、中学生だった。高校受験を控えた、人懐っこい子だった。
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