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駅員が身振り手振りで何かを説明している、しばらく見ていると女はお辞儀をして振り返り駅の出口に向かう。
背の低いほっそりとした小柄な美人、セミロングの髪を揺らしながら直哉とすれ違うと甘く優しい匂いがした。
直哉は一瞬思考が止まり、女を目で追ってしまう。
おそらく大半の男は直哉と同じようになる、我に帰った直哉は頭を振り、駅員に向かった。
駅員はまだ惚けた顔でにやけている。
「すいません。」
直哉が声をかけると駅員はやっと我に帰った。
「はっ、はい。何ですか?」
「この住所の神山さん家、ご存知ないですか?」
直哉はポケットから住所を書いたメモ用紙を駅員に見せた。
「なんだ、君も神山様の家に呼ばれたのかい?」
不信な顔で駅員が聞き返す。
「君もって?」
直哉はメモ用紙をポケットに戻しながら聞いた。
「あぁ、君で今日は5人目だよ、神山様の家を尋ねられたのは、いったいなんの用事があるんだい?」
駅員は更に不信そうに直哉を爪先から頭のてぺっんまでじろりと見た。
「子守りのバイトで面接を受けに行くんです。」
直哉が答えると、駅員の顔は一瞬強張り、表情が固まった。
「・・・そうか、神山様に失礼が無いようにな。」
駅員はポツリと答えると表情が戻った。
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