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2月29日
14時00
直哉は電車に揺られ、神山家のある荒髪町(アラカミマチ)に向かっている。
『ゴトッン・・・、 ゴトッン・・・ 、ゴトッン・・・。』
電車の窓から見える田園は直哉を落ち着かせるようにのどかだ。
直哉が育った町も田園が多く、見ている景色と重なる。
大学に行くため上京し1人暮らしを堪能していたある日、大学から帰る電車に揺られながら立っていると、母から電話がかかってきた。
『・・・直哉、』
いつもの様子と違う母の声色、告げられた言葉で直哉の生活が豹変した。
告げられた内容は、父の会社が借金を抱え倒産した事・・・。
社長だった父は責任感が人一倍強く、誰にでも好かれる父は直哉の憧れで、目標だった。
『・・・お父さんが・・・死んだ・・・の』
母の消え入りそうな声を聞いて、直哉は糸が切れた人形の様にその場に座り込んだ・・・。
携帯から母の声が聞こえて来るが、何一つ理解できず、直哉は震え始めた。
『・・・親父が、死ん・・・だ。』
何度も呟き、震える直哉に数人の乗客が様子を伺う、駅員が駆け寄ってきた時には、直哉の意識は途切れ、ブレーカーが落ちたように直哉の視界は暗転した。
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