指切り問答 [side:Clown]

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 暴かれた罪の断片が、暴かれた記憶の片鱗が、心の中で荒れ狂いながらも繋がり一つの物語へと変貌し、害虫が作物に群がるかのように精神を侵食していく。  胃が、重くなる。  そうだ、私は知っていた。私は気付いていた。自らの行いを。  それがもたらした業の意味を。  左手の赤が何を語るかを、私は知っていたのだ。繋がれた小指は、その事実を突き付ける。  胃が、重くなる。  丁度このくらいの灰皿ならば、神に背くことは容易い。それくらいの所業は、重量的にも可能だ。  いっときの感情の起伏ですら引き金となりうる。  ユメカは無言に微笑を重ね、私に訴える。その瞳が語り掛ける。  燐、と光を灯す、無垢なる双珠。  見ないでくれ。その透き通る眼差しで、私を見ないでくれ。  胃が、重イ。  君の視線が痛い。どうか、目を逸らしてくれ。無意識の深淵を見詰めないでくれ。  胃が、オモイ。  見るな、見るな! 見るな見るな! 見るなミルナミルナミルナミルナミルナっ……!  胃ガ、オモイ。 「見ないで、くれッ!」  イガ、オモイ──。  ユメカが透明に笑っている。滑稽な私を見て、笑っている。  沸騰した感情が、走り抜けた。  側にあった汚れた灰皿を、無我夢中で振り上げる。  椅子から立ち上がると、絡んでいた小指はあっさりとほどけた。
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