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全く見慣れない少女だが、まるで警戒心というものを感じることができなかった。
そして、どうして私はこんな所にいるのだろうかと、疑問に思った。我ながら、寝惚けていたようだった。
「お嬢ちゃんの名前は何だい? よければ、ここがどこだかも教えてくれないかな?」
微笑を浮かべたまま、少女は私を見ていた。そして、その小さな口を開く。
「私はユメカ。ここはね、私の秘密の場所なの」
舌っ足らずな言葉が、耳にくすぐったかった。
「それでね、おじさんに訊きたいことがいっぱいあるの」
おじさんか。三十路となれば、そう呼ばれても仕方ない。
私は、苦笑しながら言う。
「訊きたいことって何だい?」
だが、ユメカが私の質問に答えることはなかった。
「これからする質問にはね、破ってはいけないルールがあるの。だから、約束してね」
そう言って、ユメカは私の目の前に白々として華奢な小指を突き出した。
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