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「一本!」
審判の声が道場に響く。静かだった場内が、歓声と悲鳴に包まれた。
「恭く~ん、カッコよかったよぉ」
「ありがと」
ヌメヌメしてる、と思いつつ嬉しくもない声援に笑顔で手を振る。掴まれて乱れた襟を整えながら、壁際でニヤニヤ怪しげにこちらを指差しながら女の子と笑う馬鹿たれの方へ向かう。
どうせ、俺のことをあることないこと話して楽しんでいるに違いない。
「……でさぁ、恭のやつ、折角貰ったチョコゴミ箱に捨て」
「てないから。 楽しそうだな、龍也?」
ふざけんな下等生物が、と微笑みながら念を送ってみる。
「アッハッハ、冗談でーす。……すいません、ホントごめんなさい」
「ごめんねー、うちの馬鹿が余計な事喋ったみたいで。忘れてくれるかな?」
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