78人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここは…どこ?」
セオは薄暗くて冷たい石で出来た部屋の隅に立っていた。
その部屋にはあちこちにロウソクが置いてあり、部屋を照らす物はそのロウソクだけだ。
そしてお香のような物や、魔術師が魔術を行うときに使う魔方陣などがそこら中にあった。
しかしセオにはお香の匂いもセオのすぐ右側にある大きなロウソクの熱さも感じなかった。
まるで自分だけ違う世界にいるかのようだ。
そのせいか、指一本動かすことが出来ない。
動く物と言えば自分の目だけだった。
セオは部屋の奥に何かがいることに気付いた。
しかし部屋は暗くて良く見えない。
すると自分の右側にあるドアから黒いローブを羽織った一人の人間が現われた。体格から見て男だろう。
ドアが閉まった瞬間にセオの手を燃やしそうになっていたロウソクの火が消えた。焦げ臭い煙が部屋を漂う。
しかしセオがその臭いを感じることはない。
男にも自分の姿は見えていないだろう。
確信はできないが、直感的にそう思った。
男は部屋の奥にいる生き物に近付き、ロウソクを灯した。
その生き物がセオにもはっきり見え、驚きに目を丸くした。
口も動かすことが出来れば悲鳴を上げていたところだろう。
そこにいたのは一匹の真っ黒なドラゴンだった。
最初のコメントを投稿しよう!