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何分か経ち、男は呪文を止め、ドラゴンももがくのを止めて静かになった。
セオが息を飲んでドラゴンの無事を願っていると、パッとドラゴンの目が開いた。
どうやら男はドラゴンを殺そうとは思っていなかったようだ。
しかしセオはドラゴンの目を見て今まで以上に体が固まってしまった。
綺麗だったあの瞳は真っ赤な恐ろしい色に変っていたのだ。
男は歓喜に満ちた笑い声を上げている。
するとドラゴンは鋭い目でセオを見て来た。
ドラゴンに自分の姿は見えていないはずだ。
しかし、しっかりとドラゴンと目は合っている。
ドラゴンはついに牙をむき始めた。
黒い体に白くとがった歯が目立つ。
やはりドラゴンには自分の姿が見えているのだろうか。
セオは動かない体を必死に動かそうとしたが、動くはずもないことはセオにも分かっている。
しかしどうにかして逃げなければ、すぐそこのドラゴンが尾を左右に降り、身を縮めて今にもセオに飛び掛かろうとしているのだ。
まるで獲物を狙うライオンの様に。
セオが動けずにいるまま、ついにドラゴンが巨大な歯をむき出して飛び掛かって来た。
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