76人が本棚に入れています
本棚に追加
海の上に浮かぶ島があった。
あまり大きくないその島の上には、城が建っている。
その周りには沢山の緑。
今では誰でも知っている島。
それでも、
誰も立ち寄らない島。
その海岸線に、小さなボートが一つ浮かんでいた。
そこに、一人の女が立っている。
揺れるボートの上なのに、危機感がまったくない。
女は、長い黒髪を揺らしながら、ただ島の奥を眺めている。
あと一歩踏み出せば上陸できる距離。
それなのに、彼女は動こうとしない。
ふいに、彼女が右手を島に向かって伸ばした。
島の空気に触れようとした、その時…
バチ!
静電気のようなものが、彼女の手を阻む。
手にできた火傷のせいか、それとも別の感情なのか…彼女は顔をしかめた。
「…どうして…」
ぽつり、呟く。
「どうして…また…」
その呟きは、呆気なく夜の海に吸いとられた。
――どうしてまた、人は過ちを繰り返す?
「これが…あんたの望みなの?」
また始まるであろう戦いを愁い、女は静かに目を伏せた…。
最初のコメントを投稿しよう!