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「林さん...昔はあんな感じじゃなかったんだよ。」
知ってるよ。昔は若かったし、1番格好良かったもんなぁ...
「あんな事さえ起きなきゃな...」
あんな事?
確かに、ある日突然林さんは姿を消した。
そして、俺が応援してた水戸ホーリーホックはJ1からJ2に落ちた...
そんなで一時期サッカーに興味なくなったんだよなぁ。
でも、林さんが戻って来たと聞いて、水戸ホーリーホックに入団を決めたのだ。
新井「何があったんですか?」
「ん...水戸がまだJ1で優勝争いしてた時期があんだけど。まぁ今じゃ想像できないだろ?」
恥ずかしそうに笑う。
「ある日な、林さんが相手選手に悪質な反則受けてな。アキレス腱断裂・膝関節亜脱臼・疲労骨折ときた。選手生命を脅かされたんだ...」
なんて壮絶な...
新井「引退は?」
「俺達も説得したさ。でも林さんはリハビリして現役復帰するって。」
新井「そうなんですか。」
「約束したんだ。もう一度J1優勝目指して頑張るって...でも俺達はJ2に降格しちまった。」
当時の水戸は、林さんの1マンチームだったが優勝戦線に絡むほど強かった。
しかし...
「J2降格と同時に他の主力達は引き抜かれちまった。」
「林さん直々に説得に回ったけど...ほとんど抜けたんだ。裏切り者って思ったのか、それ以来林さんは一人でいる事が多くなった...」
新井「疑心暗鬼...ですね。」
無理もない。共に目標を目指して闘ってきた仲間との信頼が、音を立てて崩れていったのだから...
『バコ!』
「痛てぇ!?」
いきなりボールが飛んで来て、先輩に当たった。
その方向には林さんがいた。
林「練習だよ。早くするだよ!」
「は、は~い」
パタパタとかけていく先輩。
新井「....あの距離から狙ったのか?」
先輩と林さんの距離は50M以上離れていた...
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