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「林檎が食べたい…」
普段は林檎なんて全く食べていないのに、風邪をひくと無性に食べたくなるのはなぜだろうか。体が弱っているときに欲しがるものは、いつの時代もそう変わるものではないらしい。
今日が定休日でよかった。ただでさえ客の少ない小さな店なのに、営業日に休んでしまったらどんなことになってしまうのか。赤字続きのこの店は、すぐにでも潰されてしまうだろう。
今日は水曜日。みさとしが1限目から授業を入れている日だ。
「みさとし…」
体が弱っているというのに、私はみさとしのことばかり考えていた。恋人でもないみさとしが、私のところに来るはずもないのに。私はかすかに開いた戸口から、店に所狭しと並ぶ帽子を眺めていた。(完)
[帽子屋★.]
→「た」
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