☆ツンデレツン道中記☆

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 火鷹(ヒダカ)様と共に妖魔人(ヨウマビト)の里を出て、行くあてもなくさ迷い、何日か過ぎ…。  ほとんど(しゃべ)らなかった火鷹様が、やっと口を(ひら)いた。 「…笹霧(ササギリ)……」 「はい」  守源国(シュゲンコク)を出て西の国。  険しい山の途中、朝もやの中。湖の横でひと休みをしていた所だった。 「僕にとっての笹霧は、あの(じい)さんのイメージしかない」 「…はい」  それはそうだ。ヒュプノス()では、本当の姿を見せた事はなかった。召し使いの老人に化けていたから。 「本当の名は(なん)だ」 「……ありません。(わたし)は物心ついた時から孤児で、色々な妖魔人の元を転々としてましたので」  奴隷以下の扱いを受けて。それでも抵抗せず、無感情を(よそお)う人形でいた……そういう生き方しか、知らなかったのだ。  …火鷹様は覚えていないでしょうね。  あなたに出会えたから、私は――… 「……風が、吹いていたな」 「?」  顔を向けると、火鷹様は私ではなく湖の方を見ていた。 「あの時は、ほんの()(まぐ)れで、お前を助けるつもりなど微塵(みじん)も無かった」 「火鷹様……あの時の事、覚えて…」
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