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ーーそこは、妖魔人の館内の一室で、ちょっとした書庫になってる小部屋だった。
近頃、読書にハマってるという架那の情報通りで…。
「………いた。」
蒼大くんは窓際を背にして座り、熟睡してた。
膝の上には、本が乗っている。
「…………」
愛らしい寝顔に、しばし言葉を失う。
こっちまで幸せな気分になるなぁ…。
あたしと共に蒼大くんを覗き込んでた彼も、同じふうに思ったのか、少し黙っていたが。
「……このままじゃ風邪引くな。…綺流兎ちゃん、その本持って」
「あ、うん…」
小声で話しながら、起こさないように、そっと蒼大くんを抱きかかえる夕羅。
こうして見ると、父親(かなり若すぎるけど)みたいだ。…並んで歩いてるあたしも、ほんのちょっと母親みたいな気分。
蒼大くんを部屋まで運びながら、少し照れくさい妄想をしてたあたしに、夕羅が言った。
「…蒼大のやつ、何の本読んでたんだ?」
「あっ、持ってきちゃっ……」
こっ!これは…!!!
…妖々出版社『激ラヴ!来い☆濃い☆恋占い大百科・第31巻~キミの乙女なハートにピリ辛マヨネーズで火をつけて~』定価3240円…
「…………。」
「…………。」
その後。
夕羅と意見が一致した結果、館内の怪しげな本たちは撤去されましたとさ☆
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