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……少し風の強い日。
妖魔人の里から南西の国境付近。草木しか無い所だった。
私は同じ妖魔人の手により、人間に売られそうになっていた。
…どうでもいい。
どこへ連れて行かれても、今までと同じ。
同じ日々を、繰り返す。
『無表情な女だな、使い物になるのか?』
『さぁ…、試してみればいんじゃない?』
…人間の男たちの顔など覚えていない。ただ、私を奴らに引き渡す役割の妖魔人は、若い青年だったと思う。
『ぁぐ……っ!』
バシンと頬を殴られ、地面へ倒れ込む。
口の端から、血が流れた。
『へへっ、ちゃんと妖魔人って、赤い血なんだな』
『他の部分も人間と同じか、確かめようぜ』
『………』
…どうだっていい……、どうだって……。
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