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「わっ、私ですか!?」
老人は紛れもなく、この私…六左衛門を指差している。
「あ…あーはっはっはっ、何ご冗談おっしゃってるんです!そんな訳な…」
「いんや~、確かにこの目と耳で確認しましただ~よ~!ワシ、猫耳族ですんで、耳は良いのです~」
老人が帽子を取ると、ピョコンと可愛らしい猫耳が出た。
「…で、何て言ってたか覚えてます?」
普段より一層冷めた視線の是枝さんが、老人に訊く。
「覚えとるでな~。泣き叫びながら、『架那さん、自分と付き合って下さい!』とか、『好きです架那さん!毎朝、味噌汁作って下さい!』とか、『架那さん、この六左衛門を貴女の下僕にして下さい!』等々~」
「ぅっぎゃーーーっ!!もう止めて下さい!!」
わ…私はただ、告白の練習をしてただけなのに!
それに熱が入って、泣き叫んでしまっただけなのに!!
聴こえてるなんて思わなかったのにぃぃぃ!!!
真っ赤な顔でおたおたしているロクを眺め、水鳥と是枝は小声で話していた。
「ロク様…涙目ですわよ」
「水鳥……あの人に、真実を伝えた方がいいと思うか?」
架那は女装した男だという事を、是枝たちは知っている。
…というか。
恐らく、里のほとんどの者は知ってる。
夕羅の命令?で、ロクにだけは内緒にしておけ……という事だった(理由:面白いから)。
「……黙っておきましょう。真実は時に残酷ですわね…」
「同感だ。」
探偵団、短時間で解散。
妖魔人の里は本日も平和である(心に大ダメージを負った者、1名を除いては)。
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