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『…さっきから、うるさいな。』
突然の声に驚き、見上げると木の上に人がいた。
…彼の左手に、ポゥッと青白い火の玉が浮いている。
目付きの悪い男……おそらく、妖魔人。
『だ、誰だ、お前っ!?』
『火鷹・ヒュプノス…と名乗ったところで、人間などには無意味だな。』
ヒュプノス家……狐火族の血統が濃い一族だ。
私も一応は狐火族だと思うが、少し変身できる程度…炎を出すなんて力はない。
『たまに遠出してみれば、ろくでもない連中ばかりだな。腐りきったゴミ共め』
『何だと!?この野郎…』
ゴァ…ッ!
炎が、踊る。
辺りの草木が、一瞬で灰になった。
驚愕する人間たちに炎をちらつかせ、彼は言った。
『今みたいに秒殺されるのがいいか、ジワジワと焼かれるのがいいか、…どちらか選べ』
その言葉で、男たちは震え上がったようだ。
『ばっ…化け物だ…!!』
『う…うわあぁあ!!に、逃げろっっ!!』
蜘蛛の子を散らすように、彼らは逃げていく。
…いつの間にか、仲介役の妖魔人の青年もいなくなっていた。
『……生きたいのなら、抵抗くらいしろ。』
立ち尽くす私にボソリと呟き、彼は去っていった。
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